Nippon Chronicle

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「ワールドカップ『退屈』日記」、連載中です
 ワールドカップ期間中は更新に励むと予告しておきながら、まったくできていませんでした。

 ニューズウィーク日本版オフィシャルサイトでブログ形式の連載を始めたためです。このページでやろうとしていたことを、ニューズウィークでやっています。

 タイトルは「ワールドカップ『退屈』日記」。読んでみてください。



| ワールドカップ | 06:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
それを「敵」に聞いて、どうするの
  5月22日(土)にNHK BS1で放映された『ワールドカップ ジャパンブルーに託す夢』という番組が、ものすごかった。

 といっても、10時間近い放映時間のことではない。最後に設けられた「世界を結んで徹底ディベート」というコーナーである。日本代表がグループリーグで対戦するカメルーン、オランダ、デンマークの元代表選手や評論家に日本の評価を聞くという構成なのだが、こんな番組が流れているワールドカップ出場国は、おそらくほかにないだろう。

 イングランドのテレビ局が、対戦相手であるアメリカやスロベニアのサッカー関係者に「今度のイングランドはどうでしょうか?」と聞くはずはない。イングランドがある程度の強豪であり、「フットボールの母国」という自負をもっているからではない。アメリカのテレビ局もそれはやらないし、スロベニアでもおそらくやっていない。

 なぜか。「敵」に聞いても仕方ないからだ。それ以前に、あほらしくて、恥ずかしくて、つまらなくて、聞けないからだ。自国代表を評価したいなら、外からの見方に頼らず、自分たちがやればいい話だからだ。

 スタジオには駐日デンマーク大使が呼ばれていた。デンマークの誰かを呼びたかったのなら、たとえばミハエル・ラウドルップならわからなくはない。だが、いくら「サッカー通」だとしても、なぜ大使だったのだろう? 

 ワールドカップ出場も4回目だ。こういう古めかしいセンスと世界観は、そろそろ捨て去っていいのではないか。

| ワールドカップ | 01:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
南アフリカは「遠い」のか
  ワールドカップ日本代表の23人が発表された。記者会見にのぞんだ日本サッカー協会の3人は、相当な緊張の色を漂わせていた。

 もちろん会見の焦点は、岡田武史監督が読み上げる23人のメンバーだった。しかし、今回のワールドカップを日本がどうとらえているかを示した言葉は、べつの登壇者から聞かれた。

 原博実・技術委員長である。原は自分の話をこんな言葉から始めた。

「今回のワールドカップは、南アフリカで開催されるということで、なかなか現地で応援するのはむずかしいかもわかりませんが……」

 原の発言は「それでも現地に来てくれるサポーターはスタジアムで、来られない人はテレビの前で日本代表を応援してほしい」と続いた。だから、彼の言いたかったことはわかる。

 しかし「南アフリカで開催されるということで……」というポイントから始めたことは、原自身だけでなく、日本のサッカー界が今回のワールドカップをどうとらえているかを、みごとに表していた。

 アフリカを「遠く」感じている、ということだ。

 アフリカはたしかに遠い。成田からヨハネスブルクまでは、たいていのフライトで20時間ちょっとかかる。前回大会を開いたドイツの都市なら、13時間くらいで行けた。ヨーロッパとの比較ということでいえば、距離としてはもちろん遠い。

 だが原の言葉が示すものは、物理的な距離ではないだろう。むしろ、日本のサッカー界が感じている「心理的」な距離である。

 心理的に「遠い」場所で、しっかり戦うことはできない。原はこのとき、「アフリカは遠い。でも、もっとたくさんのサポーターに来てほしい。まだ間に合います」と言うべきだったかもしれない。

 旅行会社関係者によれば、今度のワールドカップで現地に行く日本人は、前回ドイツ大会の4分の1程度の見込みだという。物理的な距離に加えて、治安が悪いという印象と報道が二の足を踏ませていることは想像がつく。

 でも、アフリカは「遠い」のか。そう思うとすれば、それはなぜなのか。

 僕自身、遠いなと思う。思いながら、ワールドカップが開幕する6月11日にヨハネスブルクに着く飛行機に乗ることにした。

「遠い」と思っていた自分がどう変わるのか。このブログで書いていきたい。
| ワールドカップ | 17:12 | comments(2) | trackbacks(0) |
校了間近
 新刊にようやく目鼻がつきました。

『メディアスポーツ解体──〈見えない権力〉をあぶり出す』
 NHK出版(NHKブックス)
 12月26日発売

 前著『スポーツニュースは恐い──刷り込まれる〈日本人〉』よりも、スタンスを深く広くとり、「メディアスポーツ」が私たちに及ぼしているパワーをあぶり出そうという試み。帯のコピーは「私たちの日常を操っているのは、誰だ」。

 内容はこんな感じです。

1 イントロダクション ─ なぜメディアスポーツを解体するか
2 ナショナルなもの
3 ナラティブ/物語
4 ジェンダー
5 神話・ステレオタイプ
6 ヒーロー ─ 〈イチロー〉の意味
7 むすびに代えて ─ 松井秀喜に投影されたもの

| スポーツニュースを読む | 17:59 | comments(1) | trackbacks(0) |
フットボール道場
「フットボール道場」というイベントからお誘いをいただき、12月6日(日)にトークをすることになりました。

 タイトルは「ワールドカップでつくられる日本人」。もしかすると『スポーツニュースは恐い』を読んでいただいた方以外には、ちょっとわかりにくいかもしれません。

 要するに「スポーツ報道とナショナリズム」の話です……といってしまうと、自明のことのように思われるかもしれません。しかしメディアがかもし出すナショナリズムは、「がんばれ、ニッポン」「負けられない戦いがそこにはある」というような、あからさまなホットなものだけではない。もっと静かなナショナリズムを、周到にそして狡猾に、つくり上げています。それも、メディアの側も意識しないうちに。

 メディアのサッカー報道がいかに〈われわれ日本人〉という存在をつくり、私たちの日常を規定しているかという話をします。聞いて楽しいメディア論。

 ワールドカップ組み合わせ抽選の翌日なんですね。日本の組み分けがトークのネタにできるようなものになると、ちょっと面白くなりそうです。

http://www.plus-blog.sportsnavi.com/yokocom/article/16

***

 第23回フットボール道場 at Disco Pants
「ワールドカップでつくられる日本人──フットボールとメディアについてまじめに考えてみる一夜」

 今年最後のフットボール道場は、今までとちょっと趣を変えてお送りします。
 
 岡田監督がTBSに激怒した件が記憶に新しい今日このごろ、地上波の代表戦ではいつも(どの国のことなのかわからない)世界へ挑戦し続ける(世界の端っこにあるらしい)日本代表が絶対に負けられない戦を繰り広げています。そして負けると戦術やスキルではなく、国民性の問題にすり替わってしまう……。

 今回はそんなふうにメディアの側からフットボールをとらえた本『スポーツニュースは恐い──刷り込まれる〈日本人〉』の著者であるジャーナリストの森田浩之さんを囲んで、ちょっとまじめにフットボールとメディアについて語り合います。

●スケジュール
日時 2009年12月6日(日)
開場 午後6時30分
時間 午後7時〜午後9時ごろ

●会場
スポーツカフェ・ディスコパンツ
渋谷区千駄ヶ谷2−32−1 
03−3408−6099

●参加費(ワンドリンク+軽食つき)
 一般 2,500円 学生 2,000円

●参加お申し込みはinfo@yokocom.orgまで、お名前・参加種別(一般・学生)・参加人数を明記のうえご連絡ください。折り返し予約完了のメールをお送りします。

●主催
NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ


| イベント | 23:49 | comments(0) | trackbacks(0) |
イチローのコメントがすさまじい
  WBCで優勝を決めた直後のイチローのことばが、ものすごい。グラウンドレベルでのインタビューにこたえたものだ。

〈僕はもってますねぇ、やっぱり! いやあ、神が降りてきましたね。あの打席では、日本からの目がものすごいことになってると思って、それをなんか、自分のなかで実況しながら打席に入っていて、そういうときって結果出ないんですけど(結果を出せたので)ちょっとひとつ壁を越えたような気がしましたね〉

〈自分のなかで実況〉しながら、あのヒットを打ったと、イチローはいう。
 彼はメディアに映る〈イチロー〉を、もうひとりの自分の目で見ることができている。

| スポーツニュースを読む | 13:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
わかりやすすぎる容疑者のコメント
 6月8日(日)。アキバ、ハケン、無差別殺傷。売れ線のテーマを選んだ新書のような事件が起きた。この基本的な事実関係だけでも、メディアにとっては「ツッコミどころ満載」だ。

 犯人は警察の調べに対し、「人を殺すために秋葉原に来た。世の中が嫌になった。生活に疲れてやった。誰でもよかった」と話していると、新聞はこぞって書いている。メディアが伝える容疑者・犯人のことばは、いつもひどくわかりやすい。整理されすぎている。

 本当に加藤智大は、犯行にいたった心情をこんなにわかりやすく話しているのか。それを知っているメディアはひとつもない。警察関係者への取材から伝聞で得た情報でしかないからだ。そんな危なっかしいルートを流れた情報が、「……と話しているという」「……と話していることが9日、分かった」といったあやふやな表現とともに、事件の性格をつくり上げていく。
| メディア | 16:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
オマーンは「灼熱の地獄」だったのか
 6月7日(土)。ワールドカップ予選、オマーンでのアウェイ戦をTBSの中継で見る。日本代表はもし負けると、残り2戦に相当なプレッシャーがかかるところだったが(忘れそうになるが、まだ3次予選なのだ)、ドローに持ち込めてよかった。アウェイの戦いとしては及第点だと思う。

「アウェイの戦い」を強調するTBSの実況が強烈にうるさい。「灼熱」「地獄」という大きなテロップがおどり、「ニッポンにとっては史上最も過酷なアウェイ戦といっていいでしょう!」といったことばが実況アナの口からやたらと出てくる。

 オマーンはたしかに暑いのだろう。北国育ちの僕などが行くべき場所ではないにちがいない。けれど、今日の盛り上げ方はやりすぎだ。まず当たり前の話だが、オマーン代表も同じ条件で戦っているのだ。立場を逆にして考えてみる。もし梅雨のさなかの日本にオマーンがやって来て、豪雨の中で戦ったとしたら、オマーンは「地獄」で戦っていて、日本が有利といえるだろうか。

 外国を必要以上に、遠くて異質なものに描くのは、そろそろやめにしないか。日本人にとって、外国(あるいは「世界」)は「過酷な場所」であり、日本だけが「安心できる場所」という目線がこの国のメディアには強すぎる。それをメディアが続けていると、成田空港に降り立ってパスポートチェックのあたりで目に入る「おかえりなさい」の文字がいつまでたってもなくならない。あんなに自国民だけに親切で、しかもある意味、不気味なメッセージを掲げている国際空港は、おそらくほかにない。

 もうひとつ、この盛り上げ方が問題なのは、「灼熱の地獄」といえる時間に試合をすることにTBSが加担した可能性が高いためだ。今日のキックオフは、現地時間の午後5時15分(日本時間午後10時15分)。オマーンで行われる3次予選の他の2試合は、午後6時30分に設定されている。日本戦だけは日本のテレビ視聴者が見やすい時間に繰り上げたのだろうと推測できる。

 しかも、この日はユーロ2008の開幕日だ。地上波の放映権をもつTBSは、開幕戦のスイス─チェコを0時45分から放映した。オマーン戦はそれまでに終えてもらわなくてはならなかった。現地時間の午後6時30分キックオフだと、ユーロの開幕戦に重なってしまう。

 オマーンのGKで、プレミアリーグのボルトンに在籍するハブシは「この季節に午後5時過ぎの試合開始という経験はない。おそらく内容はひどい試合になる。両チームともに動けず、何もできないかもしれない」と語っている(朝日新聞6月6日)。午後5時15分開始という設定は、オマーンの選手にとっても「地獄」だったわけだ。TBSの都合で試合時間が繰り上がったとすれば、自分たちがより厳しい試合環境をつくることに加担しているのに、それを「灼熱の地獄!」と騒いでいることになる。だから、よけいに耳ざわりだ。
| スポーツニュースを読む | 09:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
山本浩の「ことば」とともに20年を過ごせた幸運
[ブックレビュー]『メキシコの青い空──実況席のサッカー20年』山本浩 著(新潮社、2007年)

 NHKの山本浩アナウンサーが本を出した。『メキシコの青い空』というタイトルは、ピンとくる人とこない人の差がとてつもなく大きいかもしれないが、あなたが「ピンとくる」派であれば、ぜったいに読んで損はない。

 85年のワールドカップ・アジア最終予選の韓国戦から、昨年のドイツ大会決勝までを、山本さん(と、面識もないのについ呼んでしまう)が実際に放送で発した「ことば」を織りまぜながら振り返るという構成になっている。

 山本さんの実況といえば「東京・千駄ヶ谷の国立競技場の曇り空の向こうに、メキシコの青い空が近づいているような気がします」といった、ちょっと詩的なオープニングのセリフが注目されがちだが、すばらしいのはそれだけではない。この本を読むと、プレーのなかでとっさに口にしていることばが、いかに適確であり、すばらしいリズムをもっているかがよくわかる。実況のことばを読むだけで、プレーの場面を頭に描くことができるのだ。たとえば、ジョホールバルで発せられた次のようなことば。

〈中田。名波、中田が出る。中田が出る。中田が出る。中田の。角度がないが。シュートチャンス。最後は、岡野。あっ、ふかした。頭抱えました、岡田監督!〉

 ことばが動いている。〈中田が出る〉を3度続けたあとで、〈中田の〉と止める。のみこんだことばは何だったか。〈角度がないが〉で再び止める。その瞬間のプレイにかぶせるには、これで十分だったにちがいない。
 
 いうまでもないが、これらのことばは偶然に発せられたものではない。この本のあちこちで山本さんは、経験から獲得した実況の極意のようなものに触れている。〈プレーの最中には、コントロールしながら息を使う。ちょうどスイカの種をはき出すような要領だ。「ぷっ。ぷっ。ぷっ、ぷっ。ぷっ、ぷっ、ぷっ、ぷーうっ、ぷっ」〉。そのうえで山本さんは〈あくまでもプレーにシンクロすること。音程に気をつけること。声の大きさも制御すること〉と書く。〈試合は盛り上げるものではない。それなりの試合はひとりでに盛り上がる〉ともいう。若いスポーツアナは、このことばを大きな紙に書いて机の前に貼っておいてほしい。
 
 試合を終えた日本代表がホテルの部屋で車座になって宴会をやっていた80年代。「オフサイドラインの白い線が私には見えないが」と視聴者が放送中に電話してきた90年代。そんな時代を経て、日本サッカーは〈世界〉の舞台へのぼることができた。本書はその20年間をつづったユニークな日本サッカー史であり、その年月を山本浩の「ことば」とともに過ごせたことがどれだけ幸運だったかを教えてくれる。
| ブックレビュー | 22:22 | comments(0) | trackbacks(0) |
12年ぶりの家探しで考えたこと
 引っ越し先を探している。首都圏で12年ぶりに賃貸物件探しをしていて、いろいろ驚くことがある。

 まず、ほとんどの物件に冷暖房器具がついていない。

 単身者向けのマンションにはエアコンが付帯する「設備」とされている物件が多いのかもしれないが、ぼくが探している大きめの物件にはほとんどない。あったとしても、たいてい「残置物」という扱いになっている。前の住人や家主が「残して置いていった物」だから、故障したり使えなくなったりしたときには、借り主の負担で修理・交換をするという位置づけだ。

 冷暖房器具はその物件に住んだら、ぜったいに必要なものである。とくに今の首都圏で、夏に冷房のない暮らしなんて想像できるはずがない。冷暖房は、電気やガスが通っているとか、電話がつながっているとかと同じレベルの「設備」であるべきだと思うのだが、どうもそうではないらしい。

 エアコンがついていないから、借り主は買って取りつける。引っ越すときには、取りはずして持っていく。これをニッポン中でやっている。カネと労力の大変な無駄だし、環境にもやさしくない。集合住宅ではベランダの好き勝手な場所に好き勝手な室外機をつけることになるから、建物全体の美観を損ねてしまう。冷暖房器具は物件の欠かせない一部と考えないと、社会にまっとうな資本が蓄積していかないのではないか。

 もうひとつは、契約についてくる「特約」の中身だ。入居時の鍵の交換や、退居時のハウスクリーニングにかかる費用は借り主が負担すると特約で定めている物件が圧倒的に多い。
 
 しばらく前、敷金の返還をめぐるトラブルが増えたことを受けて、国土交通省や東京都が賃貸住宅のトラブル防止ガイドラインを発表した。上にあげたふたつの特約が借り主のものとしている費用は、これらのガイドラインでは、どちらも家主側が負担すべきものとされている。鍵の交換も、退居時のハウスクリーニングも、本来は貸す側の不動産経営上の都合から生じる費用であるためだ。

 不動産業者はこうしたガイドラインがあることを知って、借り主が負担するという特約を設けているわけである。こんなことでは賃貸の取引は、未来永劫にわたって家主側に超有利なままだ。

 家賃2カ月分の礼金、1カ月分の更新料などという費用も、今までは仕方ないと思っていたが、イギリスで3度の引っ越しを経験したあとでは、半分ぼったくられているような気分になる。礼金・更新料のシステムがあるのは、おそらく日本だけだ。この国に住む外国人にも、じつに評判が悪い。

「国際化」とか「格差是正」とかを本気で考えるつもりがあるのなら、礼金・更新料の廃止と、家主によるエアコンの設置義務づけを法律で定めるべきだろうよ。彼岸に入ってもバカみたいに暑いなかで家探しをしながら、そんなことまで考えてしまったので、よけいに暑く感じて疲れた。エアコンつけてくれ、お願いだ。
| 雑感 | 23:15 | comments(0) | trackbacks(0) |
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